工事写真の撮影や管理は施工管理業務において、非常に重要な業務の一つです。
監理者が設計図や仕様書通りに建設物ができているのか、また、施工方法や品質に問題がないのか等、施工状況を管理する上で重要な役割を担っています。
ただ、工事の施工状況や出来形を写真に収めれば良いわけではなく、あらかじめ決められた仕様に沿って、写真を撮影する必要があります。
本記事では、工事写真のまとめ方・工事写真台帳の作成方法から、台帳作成のための撮影のコツ、デジタル化を検討の方へ役立つツールまでご紹介します。
工事写真の重要さをなんとなく理解しているものの、もっと理解を深めたい方や工事写真のまとめ方がわからない方はぜひ最後までご覧ください。
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撮影した工事写真は工事写真台帳にまとめる
工事現場では工事の進捗状況や品質、出来形を発注者に対して、適切に共有・証明するための記録が必要になります。基礎杭のコンクリートや鉄筋、その他にも施工後には見えなくなる出来形を設計図通りに問題なく、作ったことを証明する必要があります。
工事写真はそのような施工後に見えなくなるものなどを含めて、設計図通りに作ったことを証明するための有力な手段となります。工事写真台帳とはそれらの工事写真をアルバムのような形でまとめた台帳になります。
各工種や発注者によって、必要な工事写真の項目や種類は異なりますが国土交通省が制定している「営繕工事写真撮影要領(https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001589800.pdf)」の内容は必ず把握しておきましょう。
営繕工事写真撮影要領にも記載してある通り、工事写真を撮影するときは原則として下記の項目のうち、必要な事項を記載した黒板を文字が判別できるような状態で撮影する必要があります。
- 工事名
- 工事種目
- 撮影部位
- 寸法・規格・表示マーク
- 撮影時期
- 施工状況
- 立会者名・受注者名
- その他
原則、こちらを遵守していない場合、工事写真として記録していても無効となる場合もあるので、注意してください。
工事写真台帳には上記の項目が過不足なく含まれている工事写真をファイリングするようにしましょう。
工事写真台帳の作成方法・まとめ方
こちらでは工事写真台帳の作成方法とまとめ方について解説します。工事写真台帳は発注者に提出する重要な役割を担うので、工事に着工する前に必ず工事写真台帳の作成の仕方や、まとめ方を理解しておきましょう。
工事写真台帳のまとめ方のポイント
工事写真台帳のまとめ方にはポイントがあります。下記のポイントを抑えて作成しましょう。
1.写真管理計画を策定する
まずはどのような写真を撮影する必要があるかを仕様書や施工計画書を確認して、工事写真台帳を作成する準備をします。何の写真をいつ、どこで、どのように撮影するかを事前に決めておくことで、工事写真の撮り忘れを防ぐことができます。また、発注者によっては国土交通省が発行している規定よりも多くの項目が必要なケースもあるので、着工前に必ず確認しましょう。
2.アルバム形式でまとめる
工事写真台帳はアルバムの形式でまとめることが一般的です。後述する工事写真の並べ方を元に目次を制作して、ページごとに必要な写真をまとめることで、見る側が理解しやすいような台帳にすることが重要となります。
3.工事台帳写真ソフトを活用する
エクセルなどで工事写真と項目等を記載して工事写真台帳を作成することもできますが、専用の工事写真台帳ソフトを使用することで、効率的かつ、過不足なく工事写真台帳を作成することができます。ソフトにもよりますが、決められた規定通りの工事写真台帳のフォーマットに着工前に作成した写真管理計画をソフトに読み込ませて、あとは写真を撮影するだけの状態にしておきます。それぞれの項目を指定して工事写真を撮影することで、自動でアップロードすることで効率的に工事写真台帳を作成することができます。
4.関係者間で写真が共有しやすい形式で保存する
工事写真を撮影する担当者は1人ではないケースがほとんどです。工事写真台帳を担当者全員で作成する上で、関係者全員がどこでいつ撮影した、何の工事写真があるのかを、分かりやすく管理することが工事写真台帳を作成する上では大切です。撮影日や場所などのキーワードをフォルダや写真ファイルの名前につけておくことで、後々の写真整理の効率化に繋がります。また、共有しやすい形式で保存しておくことで、工事写真の撮り忘れを防ぐことにも繋がります。
工事写真の並べ方
工事写真の並べ方は国土交通省が発行している、写真管理基準(https://www.cbr.mlit.go.jp/architecture/kensetsugijutsu/doboku_shiyousyo/pdf/r02/shiryo_07.pdf )を参考に下記の順番に並べる必要があります。事前に作成した写真管理計画を元にそれぞれ工種ごとに下記の順に工事写真を並べましょう。
着工前と完成後の写真が比較できるように写真を並べます。必要に応じて、全景の写真と部分部分の写真を並べます。
施工箇所ごとに施工状況や施工手順の写真を並べます。それぞれの工種によって、施工状況や手順の必要な写真の数は異なります。品質管理を示すための施工手順がある場合は一緒に並べます。
施工の工程ごとに安全管理が十分に実施されていることを証明する写真を並べます。監視員の配置写真や安全訓練の状況写真、保安設備の設置状況、各種安全対策(標識等)の状況写真を並べます。
施工で使用した材料の写真を並べます。それぞれの材料の外観や実際に使用して施工していることを証明する写真を並べます。鉄筋などのミルシートも一緒に添付することもあります。
十分な品質管理体制で施工が行われていたかを証明する写真を並べます。材料の測定中の写真や試験中の様子の写真、試験結果の写真を並べます。
工事発注者が定めた規格基準に対して施工されたものの精度がどのくらいかを証明する写真を並べます。施工箇所ごとの計測時の計測写真などを並べます。
施工中に現場で災害が発生した時の写真を並べます。台風や地震、暴風などの災害が該当します。
施工中に現場で事故が発生した時の写真を並べます。事故の状況から、事故の復旧中〜復旧後の写真を撮影して並べる必要があります。
上記以外でその他に発注者に提出する必要がある写真を並べます。
工事写真台帳作成における撮影のコツ
工事写真台帳を作成する時に必要な工事写真を撮影するためにはいくつかのコツがあります。こちらでは、その主要なポイントを10個紹介します。
1.事前に必要な工事写真の撮影の項目を押さえておく
工事写真はただ施工状況などを撮影すれば良いというわけではありません。必ず事前にどのような工事写真が必要なのかを確認しましょう。
2.明るい時間帯に撮影する
明るい時間帯、特に午前中の自然光を利用することで、写真の明るさとクリアさが向上します。自然光は被写体のディテールを鮮明に捉えるのに最適です。
3.必要な機材を用意する(三脚、広角レンズ等)
三脚を使用することでカメラが安定し、ぶれのないクリアな写真が撮れます。広角レンズは広範囲をカバーできるため、広い工事現場を一度に撮影するのに適しています。
4.撮影前にカメラの設定を確認する
ISO、シャッタースピード、絞りなど、カメラの設定を事前にチェックし、撮影環境に合わせて最適化することが重要です。これにより、任意の環境下でも最良の結果を得ることができます。
5.複数の角度から撮影する
異なる角度からの撮影は、工事の進行状況を多面的に示すことができ、より詳細な記録になります。これにより、後で見返したときにも状況を正確に理解できます。
6.重要な部分はクローズアップする
特定の重要な部分やディテールはクローズアップ撮影を行い、細部までしっかりと記録します。品質検査時には特に意識しましょう。
7.撮影データは適切に管理する
撮影したデータは適切に管理し、日付や場所、内容が分かるように整理しておくことが重要です。必要な写真を迅速に見つけ出すことや効率的に工事写真台帳にまとめられることに繋がります。
8.定期的に撮影を行う
工事の進捗に合わせて定期的に撮影を行うことで、変化を詳細に記録することができます。これは進行状況の確認や、最終的な報告書作成に非常に有効です。
9.撮影条件を一定に保つ
同じ場所で撮影する場合は、可能な限り撮影条件(光の方向、時間帯など)を一定に保つことで、写真間の一貫性を保ちます。
10.写真に日付や撮影者の情報を記載する
各写真に日付や撮影者の情報を記載することで、後から写真の詳細を確認する際に役立ちます。これは文書としての正確性を保つためにも重要です。
工事写真台帳の作成に役立つツール3選
こちらでは工事写真台帳を作成するにあたって便利なツールを3つご紹介します。
前述した通り、エクセルなどを活用して工事写真台帳を作成することはできますが、専用のツールを使うことでより効率的に高品質な工事写真台帳を作成することができるので、ぜひ参考にしてみてください。
KANNA
KANNAに撮影した写真などを管理や工事写真台帳の作成の効率化から様々な施工管理のサポートをしてくれるアプリです。KANNA内で登録しておいた写真データをそのまま報告書に添付することができるので1から報告書を作成する必要がありません。また、操作画面がシンプルで分かりやすく直感的に使用しやすいので、誰でも気軽に使用できます。自分の現場だけではなく複数の現場を横断管理することができる点も1つの特徴です。
機能 | ・現場工程管理 ・ガントチャート ・案件カレンダー ・報告書作成 ・工事写真台帳作成 ・工事写真管理 ・電子黒板管理 など |
料金 | 初期費用:0円 月額:0円~ ※プランによって変動あり |
対応端末 | ・iPhone ・iPad ・Android ・PC |
運営会社 | 株式会社Aldagram |
現場ポケット
現場ポケットも上記アプリ同様、撮影した写真の管理から工事写真台帳の作成を効率化するアプリです。こちらのアプリもチャット機能がついており、トーク機能で写真を投稿して共有した時に自動で写真をアルバムに反映してくれます。クラウド上で管理されているため、パソコン画面でもリアルタイムで確認することができます。
初期費用が0円で基本機能は10,800円/月(税別)とお手軽な金額で使用することができます。
機能 | トーク機能 掲示板機能 アルバム機能 日報機能 報告書作成 工事写真台帳作成 など |
料金 | 初期費用:0円 月額料金:年間契約「11,880円(税込)」月額契約「13,200円(税込)」 ※最大2ヶ月間の無料使用期間あり |
対応端末 | iPhone iPad Android PC |
運営会社 | 株式会社アステックペイント |
蔵衛門クラウド
蔵衛門クラウドは撮影した工事写真や使用した黒板などを現場の人でリアルタイムで共有できるアプリです。撮影した写真を工事、工種ごとに一元管理することができるので、複数人数で管理することができます。また、工種や場所などごとに自動で仕分けをしてくれるので非常に便利です。
機能・できること | ・工事写真台帳作成 ・工事写真管理 ・電子黒板管理 ・図面の管理 など |
料金 | フリープラン:0円 プレミアム ライセンスパック:人数ごとの従量課金制 エンタープライズ:ご相談(詳細記載なし) |
対応端末 | ・iPhone ・iPad ・PC ※クラウドサービス |
運営会社 | 株式会社ルクレ |
他にも便利な工事写真アプリはこちらの記事でもご紹介しているので、興味がある方はぜひ確認してみてください。
必要な項目をあらかじめ理解して写真を撮影しましょう
本記事では、工事写真台帳の役割やまとめ方について解説しました。工事写真や工事写真台帳は工事の品質や進捗などを発注者に証明する大事なツールになります。
なので、工事写真台帳を作成する時にはまず、自分が担当している工事の規定などを確認して必要な項目が何なのかを把握・理解することが最も重要になります。
工事写真台帳の質は自社の信頼にも関わるので、しっかりと事前に写真管理計画を立てて、高品質な台帳を作成しましょう。