建設業界は、働き方改革や新型コロナウイルスの影響により、テレワークやリモートワークの導入が難しいと言われていました。そのような建設業界にも、少しずつオンラインで現場管理を行う流れが広がってきています。
この記事では、オンラインで現場管理を行うメリットや課題について解説しています。実際にオンラインで現場管理を行っている企業の声も紹介しているため、導入前の参考となるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。
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オンライン(リモート)でも現場管理はできる?
結論から述べると、施工管理の業務をオンライン化(リモート化)することは可能です。
例えば、現場監督が新型コロナウイルスに感染し、監督不在で立会ができないケース。また、現場での材料確認・立会による、発注者との接触回数を減らしたいケース。
上記のケースを解消するには、オンラインによるやり取りが必要不可欠と言えるでしょう。
近年の建設業界は、施工管理業務をオンライン化する動きが進められています。国土交通省が推進するプロジェクトでは、情報通信技術を活用し、生産性向上を目的とした動きがあるほどです。
また、新型コロナウイルスが落ち着いてきても、建設業界の慢性的な人手不足により、オンラインでの現場管理は今後増える見通しです。
現場確認や立会をオンラインで行う遠隔作業支援とは?
遠隔作業支援とは、インターネットを通じて作業者と指示者の音声や映像を共有し、現場にいる作業者を離れた場所から遠隔で支援する仕組みのことです。遠隔作業支援により、施工管理の担当者は、現場に足を運ぶことなくパソコンから指示・確認ができます。
次の章からは、遠隔作業支援の代表である「遠隔臨場」とサポートツールの「スマートグラス」について解説します。
国土交通省が勧める「遠隔臨場」について
遠隔臨場とは、小型カメラ(ウェアラブルカメラ)やネットワークカメラを活用し、現場に足を運ぶことなく離れた場所から「臨場」を行うことです。国土交通省の定義によると、遠隔臨場とは「立会」「段階確認」「材料確認」を遠隔で行うことを指しています。
遠隔臨場は、2020年度から建設現場への導入がスタートしました。国が立ち上げに力を入れていることもあり、建設業界への関心が高まっています。
遠隔支援をサポートしてくれる「スマートグラス」について
スマートグラスとは、メガネのような形状で装着できるタイプのカメラのことです。両手が使えるため、作業に支障をきたすことなく現場と技術者をつなげてくれるサポートアイテムです。
なお、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録されたスマートグラスが多数開発されています。メーカーによっては、音声でズームや写真撮影の機能がついており、遠隔支援に役立つ機能が豊富です。
スマートグラスの活用により、以下の現場課題を解決しています。
- 人手不足の解消
- 新型コロナウイルスの感染症対策
- アフターケアやアフターマーケットでの人材育成
スマートグラスを活用すると、現場にいない人とのコミュニケーションが可能です。そのため、少ない人員であっても効率的な管理ができるため、少ない人員でも業務を円滑に行えます。
また、現場での直接的な人の接触を減らせることもポイントです。遠隔支援で現場管理を行うメリットについては、次の章で詳しく解説します。
オンラインで現場管理を行うメリット
遠隔支援を活用したオンラインで現場管理を行うメリットは、以下の4つです。
- 移動時間の削減
- 生産性の向上
- 人材育成に貢献
- トラブル対処の迅速化
建設業界は、人手不足・従事者の高齢化が問題視されています。近い将来、オンラインで現場管理を行うのが一般的となることが予想されています。
早期のうちからオンラインで現場管理を行っておくと、人員不足により悩むことが少なくなるでしょう。
移動時間の削減
遠隔支援で現場管理を行うメリットは、移動時間の削減です。建設現場から事務所や本社が遠い場所にある場合、移動時間が発生します。
遠隔支援で現場管理を行えると、移動時間の削減につながり、削減した時間を別の業務に割り当てることが可能です。
また、複数の現場を管理している監督の場合にも有効です。現場従事者に指定場所に移動してもらい、インターネットを通じてリアルタイムでやり取りができます。
そのため、ひとつの場所に留まっていても、複数の現場を管理できることがメリットです。
生産性の向上
遠隔支援を導入し、現場管理をオンラインで行えると生産性の向上につながります。指示者・作業者ともに、作業場所を選ばずにリアルタイムでコミュニケーションをとれることが理由です。
また、施工経験の浅い作業者でも経験豊富な指示者のアドバイスにより、スムーズな作業を進められます。現場の作業者を選ばずに施工を進められるため、施工管理者の負担を軽減し、現場の生産性向上に貢献してくれます。
人材育成に貢献
建設業界の作業は、マニュアル化が難しい内容の仕事が多い傾向です。遠隔支援を利用し、実際の作業をリアルタイムで見ることで、熟年作業者の思考・技術を学ぶ際に有効です。
また、メーカーによっては遠隔支援の作業を録画できるため、研修動画としても活用できます。研修動画を充実させると、会社全体の技術力の底上げに役立つでしょう。
トラブル対処の迅速化
建設業界は、天気や予期せぬトラブルが起きやすく、トラブルが起きてから解決するまでの時間を多く割いていました。トラブルが発生した際、メールや電話で責任者に報告し、責任者がトラブル発生場所まで移動するというのが今までの流れでした。
遠隔支援を導入することで、現場状況をリアルタイムで確認できます。移動時間の短縮や適切な状況判断を素早くできるので、トラブル解決までの時間を大幅に短縮できます。
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オンラインで現場管理をする課題
遠隔支援を活用した現場管理にも課題は残されています。以下で紹介する3つの課題があるため、しっかりと把握しておきましょう。
コスト面
遠隔支援を利用するには、カメラ機器や録画機器などが必要です。現場規模により、複数台の機器を導入するのであれば、金銭的に負担になるケースもあります。
また、工事の発注金額に遠隔支援の予算が組み込まれているケースでは気にすることはないですが、受注者側が費用を負担する場合だと、予算に見合わないことも考えられます。
導入に必要なコストと、導入した後の効果を見比べて検討することが大切です。
通信環境の設定
オンラインで現場管理を行う際に1番気をつけるポイントが、通信環境の設定です。遠隔支援を利用する際は、インターネットに接続する必要があるため、電波が届きにくい現場は映像・音声が途切れるといったトラブルが起きやすいです。
遠隔臨場のメリットは、リアルタイムでの映像・音声を共有できることなため、電波が弱い場所だとメリットを活かせないので注意してください。
ITツールに不慣れな人への対応
指示者・作業者がITツールに不慣れな人だと、遠隔支援の作業が負担に感じます。そのため、ITツールに不慣れな人に向けたマニュアルを充実させたり、サポート体制を整えたりしなければなりません。
必要に応じて、自社で研修を行わなければいけないケースもでてくるでしょう。研修時間や人員を動かすことが、オンラインで現場管理を行う課題です。
オンラインで現場管理を行っている事例を紹介
オンラインで現場管理を行っている事例を3つ紹介します。実際に利用した企業の「現場の声」を記載していますので、導入前の参考となるでしょう。
事例【1】北海道開発局 函館新外環状道路 函館市 滝沢中央改良工事
オンラインでの確認項目
・土工の出来型確認
・鉄筋の出来型確認
<現場の声>
・監督職員を待つ時間(拘束時間)がなくなり、現場工程がスムーズに進んだ。
・監督職員の検査スケジュール調整に要する時間が減った。
・検査確認行為そのものが簡素化された。
・当現場で、課題はまったく感じられなかった。よって、今後全ての現場で採用して欲しい。
国土交通省「建設現場における遠隔臨場 事例集」
事例【2】東北地整 宮城県仙台市 郷六地区床版工工事
オンラインでの確認項目
・配筋検査(A1橋台躯体)
・コンクリート品質管理試験(胸壁、床版)
・配合試験(舗装Con)
・出来形確認(排水施設工)
・使用材料確認(区画線・伸縮装置)
・現場受入(PC床版)等
<現場の声>
・新型コロナウイルス感染症対策の一環として、対面でのやり取りが減らせる。
・立会者待ちの状態が無く、時間のロスが少ない。
・社内での確認や安全面でのチェック等にも応用が可能。
・屋外使用の際にヘッドセットでの聞き取り等に多少不備があった。
・電波が届かない等の事前確認が必要。
・画面の静止・拡大等の機能が欲しい。
国土交通省「建設現場における遠隔臨場 事例集」
事例【3】九州地整 熊本県阿蘇市 熊本57号 滝室坂トンネル西新設(一期)工事
オンラインでの確認事項
・トンネル切羽判定
<現場の声>
・特に切羽判定では、切羽の地山を素堀状態で判定するため、遠隔臨場することで待機時間等のロスを減らし時短につながっている。
・不安定な状態を最小限に抑えられ、安全面にも寄与している。
・通信環境を都度チェックする必要がある。
・遠隔臨場時の画像、音声不具合が不安定な場合がある。
国土交通省「建設現場における遠隔臨場 事例集」
まとめ
人手不足や働き方改革、新型コロナウイルスの影響により、建設業界では遠隔支援を活用する動きが活発です。新型コロナウイルスが落ち着いても、オンラインでの現場管理は進められることが予想されています。
そのためオンラインでの現場管理に慣れておくと、仕事が効率的に進み、生産性向上につながります。
新たに遠隔支援での現場管理を行う際は、導入事例を見てメリット・デメリットを把握しておくと、導入後もスムーズに現場管理を行えるでしょう。