現場TECHでは、建設業界におけるペーパーレス化の現状把握、推進における課題の特定を目的に、建設業従事者249名に対してWEBアンケートを実施いたしました。
サマリー
ペーパーレス化の進捗、全体の約47%が実感も企業規模で進捗度に違い
まずは、ペーパーレス化の進捗状況やその実感度を探るために、直近1年間における勤務先でのペーパーレス化の進展度について質問しました。このセクションでは、全体の傾向と企業規模別の進捗度の違いを併せて分析しています。
直近一年で、47.4%の回答者が勤務先におけるペーパーレス化が進んでいる(「とても進んでいる」「やや進んでいる」と回答した方の合計)と回答しました。一方、半数以上は進んでいないという結果となりました。
また、売上高別、従業員数別で見ると、企業規模による差が見える結果となりました。
売上高30億円以上や従業員数101人以上の企業では、進んでいる(「とても進んでいる」「やや進んでいる」と回答した方の合計)と感じる割合が高く、特に規模の大きな企業ほどペーパーレス化が浸透している傾向が見られます。
一方、売上高1億円未満や従業員数30人以下の中小企業規模では進んでいない(「全く進んでいない」「あまり進んでいない」と回答した方の合計)との回答が多く、コストや人的リソースの不足が課題となっていると考えられます。また、中堅規模の企業では、約6割が進んでいると回答しており、ペーパーレス化が進む過渡期にあることもうかがえる結果となりました。
建設業の書類・帳票、種類別ペーパーレス化状況
次に、建設業で使用される書類や帳票について、種類ごとのペーパーレス化の状況について質問を行いました。
工程関係書類の電子化に進展が目立つ
工程関係書類(月間工程表、週間工程表など)は、「完全に電子化」が14.1%、「一部電子化」が67.9%と比較的高い結果に。「全く電子化されていない」も18.1%に留まっており、頻繁な更新や共有が求められる性質から、電子化が他カテゴリより進んでいることがうかがえます。
契約関係書類の紙依存度が依然として高い
契約関係書類(請負契約書、見積書、請求書など)は、「全く電子化されていない」が21.3%と一定数存在します。法的な押印や書面保存の慣習が、電子化の進展を妨げている可能性が考えられます。
労務・安全衛生書類の電子化が遅れ気味
労務・安全衛生書類(勤怠管理表、新規入場者記録など)は、「全く電子化されていない」が28.70%と高い割合を占めています。現場での手書き作業が依然として根強く残っており、運用改善が求められる領域でもあります。
写真管理・品質管理書類は電子化ニーズが強い結果
品質管理書類(完成図、工事写真など)は、「完全に電子化」が21.70%と他カテゴリより高めであり、現場の作業効率向上のため電子化が優先されていると考えられます。
ペーパーレス化の主要なメリットは「コスト削減」と「効率向上」
次に、ペーパーレス化を行った際にどのようなメリットを感じたのかを探るために、複数回答形式で質問しました。
ペーパーレス化を行った際のメリットとして、最も多く挙げられたのは「紙代・印刷代の削減」(55.4%)、次いで「書類の検索・参照が容易になった」(50.6%)と「省スペース化」(51.0%)でした。これらは、直接的なコスト削減や業務の利便性向上という即効性のある効果が評価されていることを示しています。また、「業務効率化・業務時間の削減」(41.8%)も上位に挙がり、ペーパーレス化が働き方の効率向上に寄与している点がうかがえます。
84.7%の回答者がペーパーレス化の必要性を感じている
ペーパーレス化に対する必要性の認識を探るため、勤務先でどの程度ペーパーレス化の必要性を感じているかを質問しました。
回答者のうち、「強く感じている」(37.3%)と「やや感じている」(47.4%)を合わせると84.7%がペーパーレス化の必要性を感じていることが分かります。この結果から、ペーパーレス化に対する認識が広く浸透しており、多くの職場で業務効率化やコスト削減の観点からペーパーレス化が重要視されていると推察されます。
一方で、「あまり感じていない」(13.7%)や「全く感じていない」(1.6%)という回答も一定数存在します。これらは、職場でのペーパーレス化の導入が十分でない、またはその効果が実感されていない環境に起因している可能性があります。
ペーパーレス化の障壁は?
84.7%がペーパーレス化に対する必要性を実感する一方、設問1の回答から分かったように、直近一年でペーパーレス化が進んでいないとした回答者は過半数を超えています。
続いて、ペーパーレス化が進まない要因にはどのようなものがあるのか質問を行いました。
最も多く挙げられた要因は「高齢化・リテラシー不足で社内に浸透しない」(46.2%)。これは、従業員全体のデジタルスキルが不十分であり、ペーパーレス化の運用が難しい状況を反映していると考えられます。特に現場レベルでは、教育やトレーニング不足がペーパーレス化の妨げになっていることが示唆されます。
2番目に多かった回答は「電子化が難しい書類が多い」(32.5%)。これは、特定の書類が電子化に適していない、もしくは現行の業務フローに深く根付いているため、デジタル化への移行が難しいことを意味しています。特に規制や法律に基づく紙運用が必要な書類が、ペーパーレス化を阻む一因と考えられます。
「推進人材不足」(31.7%)も大きな課題として挙げられました。専門知識を持つ担当者が不足している、またはペーパーレス化を推進するリーダーがいないことで、企業全体として取り組みが進まない状況が浮き彫りになっています。この点は中小企業で特に顕著であり、リソースの偏在がペーパーレス化の進展を妨げています。
その他、「変更が頻繁に発生するため運用が難しい」(22.5%)や「現場が対応する通信インフラが未整備」(16.5%)といった実務運用面の課題が電子化推進の障壁となる一方で、「情報セキュリティの懸念」(8.4%)などの技術的課題は比較的少数であり、現場の運用負担がより優先的な課題であることも分かりました。
本調査結果の位置づけと今後
本調査は、建設業界におけるペーパーレス化の進捗状況と課題を多角的に捉えるため、様々な観点から調査項目を設定し、分析を行い、本稿では、その集計・分析結果の一部をまとめました。
今後、他の設問項目を含めたさらなる分析や考察を行い、継続的に調査レポートを公表していく予定です。これにより、建設業界のペーパーレス化やDX推進に役立つ具体的な示唆を提供し、業界全体の課題解決と取り組みの促進に貢献していきます。
本アンケートについて
調査概要:建設業におけるペーパーレス化に関するアンケート
調査目的:建設業界におけるペーパーレス化の現状把握・推進における課題の特定
調査期間:2024年11月21日~2024年11月27日
調査方法:WEBアンケート
有効回答者数:249名
■本件に関するお問い合わせ先
現場TECH編集部:info@gemba-tech.jp