近年、建設業界では国土交通省から『建設現場の遠隔臨場に関する試行要領(案)』が発表されたことをきっかけに遠隔臨場システムの導入が進んでいます。
働き方改革や感染症予防対策を推進していく上では、遠隔臨場システムの導入は必要不可欠と言っても過言ではありません。
この記事では、そんな遠隔臨場システムの概要からメリット、導入時の注意点、導入事例までを詳しく解説します。
遠隔臨場システムについて、詳しく知りたい方や導入を検討されている方はぜひ最後までご覧ください。
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遠隔臨場とは?
遠隔臨場とは、遠隔地から現場の状況をリアルタイムで把握し、指示を出すことができるシステムのことを指します。
特に建設業界では、現場の安全管理や効率化に役立つツールとして注目されています。
国土交通省からは下記の通り定義されています。
遠隔臨場とは、動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)によって取得した映像及び音声を利用し、遠隔地から Web 会議システム等を介して「段階確認」、「材料確認」と「立会」を行うこと
引用元:https://www.mlit.go.jp/tec/content/001473624.pdf
遠隔臨場システムを導入することでカメラやセンサーを現場に設置し、遠隔地からの監視や指示出しを可能にします。
これにより、現場の安全確認や作業指示がリアルタイムで行うことができ、作業効率の向上や安全管理の強化が期待できます。
また、遠隔地からの監視により、現場にいなくても状況を把握することができ、人手不足の解消やコスト削減にも繋がります。
遠隔臨場が推進される背景は?
国土交通省が「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領(案)」を発表し、遠隔臨場の利用推進を図っています。
国土交通省が遠隔臨場を推進する背景としては「建設業界における労働力不足や安全管理の強化」や「コロナウイルスの影響によるリモートワークの需要増加」、また、「建設現場全体のICT化の推進」が挙げられます。
具体的には、建設業界では労働者の高齢化や若者の離れが課題としてあり、これによる労働力不足を補うために遠隔臨場システムの導入が進められています。
また、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが一般化した世の中で、現場作業も遠隔で行えるようにすることで、感染リスクを下げつつ、作業を進めることが可能となります。
遠隔臨場システムのメリット
建設業界において遠隔臨場システムを導入していくことは多くのメリットをもたらします。
ここでは、その主なメリットを5つ紹介します。
労働力不足の解消
遠隔地からの監視や指示出しにより、人員不足の現場でも作業が進行可能です。
前述した通り、近年、建設業界においては労働者の不足が大きな課題となっています。
遠隔臨場システムを導入することで、限られた人員でも効率的に作業を進めることができ、人員不足の課題を解決できます。
安全管理の強化
現場の状況をリアルタイムで把握できるため、事故防止に繋がります。
また、事故が発生した際もすぐに状況を把握することができ、対応することができるので、被害を最小限に抑えることが可能になります。
コスト削減
遠隔地からの作業指示により、移動時間や費用を削減できます。
必要な人員数も減少させることもでき、建設現場における経済的な負担を軽減することができます。
作業効率の向上
リアルタイムで指示出しを行えることにより、作業の進行をよりスムーズにすることができます。
結果、作業時間を短縮することができ、効率的に作業を進めることができます。
リモートワークの推進
コロナウイルスの影響は収まってきてはいるものの、近年はリモートワークが推進されることも多い中で、遠隔臨場システムはその一環として活用できます。
感染リスクを下げつつも作業をより効率的に進めることが可能となります。
遠隔臨場システム導入時の注意点
遠隔臨場システムを導入する際には、いくつかの注意点があります。
導入のメリットと注意事項を把握した上で、遠隔臨場システムの導入を検討しましょう。
ここでは、その主な注意点・課題を紹介します。
システム導入のコスト
遠隔臨場システムを導入するためには様々なコストが発生します。
システムを導入する上で、タブレット端末やウェアラブルカメラを導入するケースが多いです。
1台1台の価格はそれなりの値段がかかり、かつ、多数必要になることが想定されるので、リース品などであっても、多くの金銭的な負担が増えることが想定されます。
ウェアラブルカメラについてはこちらの記事で詳しく解説しておりますので、参考にしてみてください。
システムの選定
現場の状況に合わせたシステムを選定することが重要です。
例えば、建設現場の広さや環境、作業内容、通信環境などを考慮に入れる必要があります。
遠隔臨場システムは安定したネットワーク環境が必要になるので、現場のネットワーク環境を確認し、必要に応じて通信環境の改善や通信機器の導入を検討する必要があります。
システムの操作研修
システムを導入しただけでは効果を発揮できません。
適切な操作方法を習得するための研修が必要です。
また、定期的な研修やフォローアップを行うことで、システムを最大限に活用することが可能となります。
セキュリティ対策
遠隔地からの操作となるため、セキュリティ対策も重要です。
不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策を講じる必要があります。
具体的には、パスワード管理やアクセス制限、暗号化などの対策が考えられます。
メンテナンス体制
システムの導入後も、定期的なメンテナンスやトラブル対応が必要です。
システムの提供元が適切なサポート体制を持っているか、また自社でのメンテナンス体制を整えるかなど、運用面でも計画を立てる必要があります。
遠隔臨場システムの導入事例
こちらでは遠隔臨場システムの導入事例を3つ、ピックアップしてご紹介します。
スマートフォンでの遠隔臨場システムを活用した立会検査
スマートフォンで遠隔臨場システムを活用した現場での製品検査の立会検査の事例になります。
こちらの現場では重機の騒音の影響で、監督職員との指示音声が聞き取りにくいため、ワイレスイヤホンを活用することでより円滑なコミュニケーションをとる工夫がされています。
また、シンバルを活用することで撮影時の手振れ防止対策を行うことでより効率的に検査を進めることができています。
遠隔臨場による確認項目
- BF-300(側溝)の材料確認
- 土質変化時の岩線確認
遠隔臨場を活用した効果
引用元:建設現場における遠隔臨場 取組事例集
- 施工者側
- 検尺ロッドを持つ人と撮影者が片方ずつワイヤレスイヤホンを装着することにより主任監督員の指示に素早く対応できた。
- 手振れ補正機能付きジンバルを使用することにより移動時の手振れもなく、低い位置の撮影も無理な体勢にならずに撮影できた。
- 監督員側
- シンバルを通信端末に取り付けたことにより、現場臨場と同様の視野確保(ズーム機能を使用し、肉眼では確認しにくい場所など)、計測機器等の読み取りが確認できるため遠隔臨場に適した仕様であった。
- 施工者の音声聞き取りは周囲の雑音に左右されず良好であった。
ウェアラブルカメラを活用した立会検査
ウェアラブルカメラを活用した現場での配筋検査や材料研修の立会検査の事例になります。
こちらの現場ではノギスを使用した材料研修の際に、デジタルノギスを使用することによって、目盛りの判読をスムーズにする工夫がされています。
遠隔臨場による確認項目
- 既製杭工(鋼管杭)
- 使用材料(厚さ・長さなど)
- 溶接部適否
- 支持層確認
遠隔臨場を活用した効果
引用元:建設現場における遠隔臨場 取組事例集
- 施工者側
- デジタル表示により、カメラ越しでも数値の確認が容易となった。
- 支持層確認など、時間決定が困難な立会の場合でも、現場での待機時 間が不要となるため、労働時間縮減に非常に有効であった。
- 監督員側
- 北勢国道事務所の整備事業は市を跨ぐことから、立会時間の予定も組みやすく、時間的制約も解消された。
- 鋼管矢板基礎工と頂版コンクリートとの結合を目的とするスタッド鉄筋曲げ加工の角度確認に分度器を使用し、遠隔でも角度確認ができるよう現場での工夫が感じられた。
定点カメラを活用した施工状況確認
定点カメラを活用した現場でのコンクリート打設時の施工状況確認の事例になります。
施工状況を複数の定点カメラから撮影することで遠隔で施工状況を確認することができ、監督行為の負担軽減に繋がっています。
遠隔臨場による確認項目
- リアルタイム映像配信による、橋台コンクリート打設時の施工状況確認
- コンクリート品質確認
- 運搬状況
- 打設順序
- 天候
遠隔臨場を活用した効果
引用元:建設現場における遠隔臨場 取組事例集
- 施工者側
- 監督員とのスケジュール調整がしやすく、立会計画の幅が広がった。
- 定点カメラのため、両手を開けておくことで、安全確保につながった。
- 新型コロナウイルスの感染予防対策の効果が期待できた。
- 監督員側
- 執務室で施工状況の確認が可能で、監督行為の負担軽減となった。
- カメラのズームを行っても解像度に問題もなく、施工状況の細部を 確認することができた。
様々な場面で、遠隔臨場システムは活躍しています。
ただ、どの事例においても、遠隔臨場システムを活用することによる課題が発生しているのが現状です。
その中で遠隔臨場システムを活用する上で様々な創意工夫をしながら、課題を解決していくことが遠隔臨場システムの効果を最大化させるためには重要になってきます。
遠隔臨場システム比較【3選】
ここまでで遠隔臨場システムの概要やメリット、事例をご紹介してきました。
ただ、どのツールを活用すればいいのか分からないという方は多いのではないでしょうか?
こちらではおすすめの遠隔臨場システムを3つピックアップしてご紹介します。
自社での遠隔臨場システム導入の検討の参考にしていただければと思います。
遠隔臨場SiteLive
初期登録料 | 利用料 |
---|---|
33,000円(税込) | 月額22,000円(税込)/工事 年額220,000円(税込)/工事 |
遠隔臨場SiteLiveではクラウドで検査映像や画像を「KSデータバンク」に自動保存することができます。
必要に応じて、録画データを発注者に共有することができ、映像や画像をクラウドで自動保存するのも可能。
保存したデータは工事・工種ごとに紐づいて登録することができるので、整理をする手間を省いて管理することができ業務の効率化に役立ちます。
また、遠隔臨場で検査などを実施している時に配信映像と共に設計データなどを同時に共有することができるので、設計データを閲覧しながら、立会・説明ができることが非常に便利な点です。
会社名 | 株式会社建設システム(KENTEM) |
---|---|
設立年月日 | 1992年7月2日 |
本社所在地 | 〒417-0862 静岡県富士市石坂312-1 |
PLUS-T
初期登録料 | 利用料 |
---|---|
33,000円(税込) | 月額22,000円(税込)/工事 年額220,000円(税込)/工事 |
PLUS-Tでは現場での使いやすさをより追及した遠隔臨場ツールになります。
一般的なウェアラブルカメラよりも軽量でケーブルレスな作りになっているので作業の妨げをすることなく使用することができます。
とても軽量なため作業員のヘルメットに装着することができ、作業員の手を使わずに撮影ができることができます。
ヘルメットに装着した動きを想定した補正対応がされているので、配信する映像の見やすさを担保することができる点も1つの特徴です。
防塵防水(IP67)対応なので、様々な環境の現場でも使用することができます。
遠隔臨場システムを導入する上で障壁となる課題の1つとして「使い方が分からない」、「最初の設定が分からない」ということが挙げられますが、PLUS-Tは各機器の電源を入れるだけで、細かい設定をすることなく、使うことができるので、導入までの時間を短縮することができます。
費用に関しては非公開のため、詳細は問い合わせをしてみてください。
会社名 | 田辺工業株式会社 |
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設立年月日 | 1969年2月1日 |
本社所在地 | 〒942-0032 新潟県上越市大字福田20番地 (東京本社:〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2丁目2番地 御茶ノ水杏雲ビル4階) |
どこでも臨場
ビジネスプラン | ビジネスプロプラン | エンタープライズプラン |
---|---|---|
26,400円(税込)/1現場・月 | 79,200円(税込)/1企業・月 | 要問い合わせ |
どこでも臨場では遠隔臨場で立会検査などを実施する際にスマーフォン等で撮影して、配信する映像に対して、直接手書き文字で書き込みをすることができます。
検査者が映像越しに確認したい箇所を手書きで伝えることができるので、よりコミュニケーションを円滑に進めることができます。
また、配信映像上で電子小黒板を自由に表示させることができるので、検査をしながら、黒板内容を記入することができ、かつスクリーンショット撮影をすることができる点は便利なポイントになります。
スクリーンショットした画像に対して、サインなどで誰がいつどのように確認、評価をしたのかを一目で判断することができます。
会社名 | ダットジャパン株式会社 |
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設立年月日 | 1986年4月2日 |
本社所在地 | 〒060-0063 北海道札幌市中央区南3条西5丁目1番1ノルベサ5階 |
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遠隔臨場システムの導入で業務効率化を図る
遠隔臨場システムは、建設業界における労働力不足の解消、安全管理の強化、コスト削減、作業効率の向上、リモートワークの推進といった多くのメリットをもたらします。
しかし、システムの選定や操作研修、セキュリティ対策といった注意点もあります。
適切なシステムを選定し、適切な運用を行うことで、遠隔臨場システムは建設業の業務効率化を大いに後押しします。
前述した通り、遠隔臨場システムにはまだまだ課題がたくさんあるのが現状です。
そういった課題を現場で創意工夫をすることでより効果を最大化させられるかが大きな鍵になってきます。
ただ、建設業界の課題を解決する手段として遠隔臨場システムの導入・改善は非常に重要になってくることは明快です。
建設業界の発展のためにも遠隔臨場システムを現場に導入して、業務の効率化を図っていくことをおすすめします。