自治体向け工事管理システム7選 | 機能・導入事例で比較するおすすめ製品

自治体における工事管理システムの導入は進んでいますが、その進捗には、ばらつきがあります。

特に、国土交通省の直轄工事と比較すると、地方自治体での情報共有システムやICT施工の利用率はまだ低いです。 

この記事では、工事管理システムの概要と自治体向け工事管理システムの機能、システムの選び方について解説します。

また、おすすめの自治体向け工事管理システムを7製品紹介していますので、導入検討時の参考にしてください。

工事管理システムとは

工事管理システムとは、工事の受発注管理、実行予算管理、工程・進捗管理、写真管理、書類管理などから請求・支払いまで、工事の一連のプロセスを一元管理するためのシステムです。 

紙ベースの管理や複数のツール利用をなくし、一つのシステムで管理することで、作業時間と工数を大幅に削減することが可能です。

また、ペーパーレス化により、印刷代や書類保管のコストも削減できます。 

スマホやタブレットなどのモバイル端末から、いつでも最新の情報にアクセスできるようになるため、現場とバックオフィスとの情報伝達が迅速化されます。 

工事ごとの業務が可視化され、リアルタイムな収支状況の把握や予測が可能になり、的確な経営判断に繋がる点も大きなメリットです。

自治体向け工事管理システムの機能

自治体向け工事管理システムは、自治体が行う工事の契約から、入札、施工管理、検査、支払いまでの一連の事務手続きを一元管理するための機能を備えたシステムです。 

システムにより、名称や内容に多少の違いはありますが、一般的な自治体向け工事管理システムの主な機能について解説します。

契約・業者管理機能

業者管理機能は、建設業者の名称、所在地、許可業種、経営事項審査、技術者情報、自治体独自の格付情報、指名停止情報などの登録と変更の管理を行います。 

入札、契約金額、支払情報などの登録・管理、契約台帳の作成は契約情報管理で行い、情報公開や工事・委託業務検査管理も含まれます。 

指名通知書や入札調書など、契約担当部署向けの各種帳票の検索・出力も可能です。

この他、電子入札システム、入札参加資格審査申請システムなどとの連携機能もあります。

工事進捗・工程管理機能

工事進捗・工程管理機能は、各工事のスケジュールや進捗状況を視覚的に確認し、受発注者間で工程表を共有して、遅延や変更に迅速に対応するための機能です。 

具体的には、ガントチャートなどで工期内の完成を目標にスケジュール管理を行ったり、天候やトラブルによる遅延リスクを想定した計画を立てたり変更したりします。 

この機能は、現場作業者の配置状況や資材の搬入状況なども管理できるため、無駄な待ち時間や過剰な在庫を減らすことにも繋がります。

情報共有・書類管理機能

情報共有・書類管理機能では、工事打合せ簿や材料確認書などの工事書類を電子的に作成し、インターネット上で共有・回覧できます。 

書類の作成から申請、承認（電子押印を含む）までの一連の流れをシステム上で行い、確認と決済の迅速化を実現します。 

図面データや現場写真などの大容量ファイルもスムーズにアップロード・保管できる十分な保存領域があり、誰がいつ、どのような操作や変更を行ったかの履歴管理もできるため、内部統制の強化と透明性の確保が可能です。

検査・支払管理機能

検査管理機能は、地方自治法や関連法令に基づく工事検査に必要な調書や資料の作成を自動化・効率化することが可能です。 

また、検査官による検査結果（適合・不適合、是正指示など）をシステム上で記録・管理して可視化します。 

支払関連機能では、検査合格後、契約内容に基づいた代金の支払いを管理します。 

受注業者からの請求情報をシステムに取り込み契約情報や検査結果と照合して、支払いに必要な調書や伝票を自動生成し、経理・会計システムとの連携を容易にすることができる機能です。

自治体向け工事管理システムの選び方

自治体向け工事管理システムを選ぶ際は、操作性、必要な機能を網羅しているか、サポート体制の充実度の3つがポイントになります。それぞれについて説明します。

使いやすい操作性

システム操作に慣れていない職員でも直感的に使えるデザイン（UI/UX）であることが重要です。

シンプルな画面構成や分かりやすいアイコン配置であることが望ましいです。 

現場での写真撮影、進捗報告、図面確認などを考慮し、PCだけでなくスマホやタブレットなどのマルチデバイスで操作できることもポイントです。 

現場で撮影した写真を、そのままシステムにアップロードして編集することができれば報告作業の手間は大幅に削減できます。

必要な機能の確認

工事管理に必要な機能が網羅されているかの確認も不可欠です。

また、機能が多くても使うことのないものでは意味がないため、所属する部署の業務フローに合った機能かどうかの確認も大切になります。 

特に、工事情報や進捗状況がリアルタイムで一元管理できるか、書類作成や報告管理を効率化できるか、写真や図面をシステムに直接アップロード・管理して関係者間で直ちに共有できるかなどがポイントです。 

チャット機能やファイル共有機能が使いやすいかどうかも確認してください。

自治体においても関係者間のスムーズな情報共有は、コミュニケーション不足による齟齬防止や業務効率化に直結するからです。

サポート体制の充実度

サポート体制の充実度の評価も必要です。

サポート体制では、導入と運用の2つの段階での確認が欠かせません。 

自治体の場合、専任のIT担当者がいないケースもあるため、導入時のトレーニングなどサポートは手厚いことが望まれます。 

導入後、操作方法に関する疑問やトラブルが発生した際に、電話やメール、チャットなどで質問できるサポート体制があるかも確認してください。 

現在、多くのシステムで無料のトライアルやデモが提供されています。

事前に実際の使用感を評価し、自社の業務フローと適合するかの見極めも重要です。

自治体向け工事管理システムおすすめ7選

自治体向け工事管理システムの中から、特におすすめしたい7製品を厳選しました。

自治体導入に実績があり、導入後の評価が高い製品ばかりです。

情報共有システム「RevSIGN」

主な機能	発議書類管理、ワークフロー、オンライン電子納品、完成検査対応、大容量ファイル共有、スケジュール登録など
初期登録料	16,500円（工事あたり）
月額費用	13,200円

編集部コメント

「情報共有システム　RevSIGN」は、発議書類の作成、発議、決済、引戻し/差戻し、コメント入力が行えて、リアルタイムに書類ごとの進捗が把握できます。

また、発議書類ごとの決裁パターンの設定やフロー設定が可能です。

設計図書や図面、数量計算書などの電子化したデータの登録、管理、共有を行えます。

また、システム上で決裁された書類は電子納品形式でダウンロードできて、完成検査にも対応しています。

画面やボタンが大きく、直感的に操作できることを重視して設計されており、マニュアルの参照や特別な研修が少なくても利用しやすいのが特徴です。

RevSIGNの口コミ・評判

金沢市危機管理課

〈導入前の課題〉
・対応すべき事案が多岐にわたり緊急時に迅速に正確な情報を得られなかった
・何の備蓄品をどれだけ使ったのかなど、備蓄品管理が非常に困難であった
・現行の安否確認システムは備蓄管理機能や掲示板などの機能が無く災害対応に当たる職員への情報伝達に時間を要した
〈導入後の効果〉
・グループチャットや掲示板の機能を活用することで、リアルタイムに情報の共有を図れる
・各拠点の備蓄状況を登録することで、備蓄品の適切な管理を容易に行える
・備蓄管理・チャット・掲示板・ファイル共有を情報共有ツールとして使用することが可能

引用元：RevSIGN公式HP

東亜建設工業株式会社 横浜支店

〈導入前の課題〉
・点在する作業間での業務効率
・複数人で行う施工管理
・メイン工種に定まった出来形帳票がない
〈導入後の効果〉
・施工管理の効率アップに繋がった
・出来形を複数人で同時に管理できた
・独自帳票にデータを割り付け一元管理できた

引用元：RevSIGN公式HP

自治体向発注業務事務管理システム「工事台帳（奉行版）」

主な機能	案件管理、帳票出力、業者管理、実績検索、ネットワーク対応、カスタマイズ対応など
初期登録料	要問い合わせ
月額費用	要問い合わせ

編集部コメント

「工事台帳　奉行版」は、膨大な案件情報を、業種や事業年度、担当部署などでフォルダ分けして効率的に管理することができます。

Excel帳票に対応しているので、自由度の高い帳票出力ができます。

公正な比較検討のための資料を簡単に作成できて、さまざまな角度から発注案件を瞬時に検索することも可能です。

庁内ネットワークを活用した部署間の情報共有や、従来の様式を変えずに管理できるカスタマイズにも対応しています。

業者管理をはじめ、各発注業務に関するあらゆる手続き書類の出力、工事台帳による発注業務の状況管理など、発注事務処理を統括的に管理できるシステムとして評価されています。

ASP型工事情報共有システム「BeingCollaboration」

主な機能	工事進捗管理、クリティカルパス自動判断、電子検査、遠隔臨場支援、工事書類等出力・保管支援、各種最新機能要件に対応など
初期登録料	要問い合わせ
月額費用	要問い合わせ

編集部コメント

BeingCollaborationは、クラウド型のASPなので、インターネット環境があればいつでも、どこでもシステムにアクセス可能です。

受発注者間で工事進捗をリアルタイムで共有できて、複数の工事の進捗度合いも一覧ですぐに確認できます。

パソコンに保存された画像や図面データをプレビューしながら、インターネット接続がない環境でもオフラインで電子検査ができます。

オプションですが、ウェアラブルカメラやスマホを活用し、現場の状況をリアルタイムで共有可能です。

遠隔地からの指示や確認がスムーズになり、発注者の移動時間が受注者の待ち時間を大幅に削減します。

BeingCollaborationの口コミ・評判

笹嶋工業株式会社

・帳票提出/電子納品だけではない、情報共有を上手く活用するメリット
弊社では「帳票提出」と「電子納品」以外にも情報共有面で上手く活用している機能があります。例えば、国土交通省の発注工事では「BeingCollaboration PM」内で工事現場のホームページを作成し公開しています。
結果として地域住民の方々にも情報発信ができており、良いPR効果があると感じています。もう一つ例を挙げますと、役所との大容量のデータ交換において、以前はファイル送信サービスを使っていたこともありますが、セキュリティ面で厳しくなってきました。
そこで、「BeingCollaboration PM」の「掲示板」機能で大容量のデータ交換ができるようになった点も大変助かっています。

引用元：BeingCollaboration公式HP

共同産業株式会社

・仕事効率アップで、一度使用すれば離れられないシステム
「BeingCollaboration」を使用し始めると、もう紙でのやり取りには戻れないですね。国土交通省発注工事のように、各自治体発注工事も情報共有システムの導入が進めば、さらに効率がアップするので、今後に期待したいですね！
情報共有システムを使用されたことがない方にもお勧めします。一度使用すれば、良さが分かると思います。
今後の課題としては、国土交通省オンライン納品手順と施工管理システムとの連携が、もう少しシンプルになればいいですね。電波状況が悪い現場でも、情報共有システムが使用できれば、より効率良く仕事が進むと思いますので、ビーイングさんに今後期待しています。

引用元：BeingCollaboration公式HP

受発注者間情報共有システム「現場クラウドOne」

主な機能	3次元データ等共有、グループ・スケジュール・メッセージ・掲示板、遠隔臨場、ワークフロー、電子成果品作成、受発注者間情報共有システム機能要件（Rev5.6）対応など
初期登録料	0円
月額費用	9,800円

編集部コメント

「現場クラウドOne」は、受発注者間情報共有システムに対応しており、NETIS（国土交通省の新技術情報提供システム）にも登録されています。

ユーザー数・ディスク容量が無制限なので、大容量ファイルの共有・保管が可能です。

3次元データ等共有では、図面ファイルをWeb上で共有して、3次元データなどで表示ができます。

また、遠隔臨場では、スマホのカメラ機能を使って撮影し配信を行うことができます。

グループ・スケジュール・メッセージ・掲示板は、任意で作成したグループ内で、受発注者間、現場と本社間でコミュニケーションの格段に精度を上げることができる機能です。

現場クラウドOneの口コミ・評判

三浦国土建設株式会社

ASPを若手育成のツールとしても活用
〈導入前の課題〉
複数の現場を手軽に見える化をしたかった
〈解決方法〉
ASP(現場クラウドOne)に閲覧ユーザーとして登録
〈効果〉
リアルタイムに、各現場を横断的に確認できるようになった

引用元：現場クラウドOne公式HP

美保テクノス株式会社

ASPの活用で複数現場の電子納品の時間を大幅に短縮
〈導入前の課題〉
電子納品データ作成に多くの外注費がかかっていた。
〈解決方法〉
ASPを活用して、電子納品の専任化。
〈効果〉
全ての現場で電子納品データ作成への対応が可能に。

引用元：現場クラウドOne公式HP

自治体向けSaaS型ソリューション「SuperCALS」

主な機能	電子調達、設計積算、AIによる積算誤り検知支援、施工管理・情報共有、CALS/EC対応など
初期登録料	要問い合わせ
月額費用	要問い合わせ

編集部コメント

「SuperCALS」は、システムを自前で構築・所有するのではなく、SaaS（サービスとしてのソフトウェア）として利用するため、初期導入コストやインフラ維持管理コストを大幅に削減できるのが特徴です。

自治体職員はシステムの保守・管理業務から解放され、本来の業務に集中できます。

電子調達や電子納品などシリーズ内のシステム間でシームレスなデータ連携が可能で、入札から開札までの一連の手続きをオンラインで完結できます。

高度なセキュリティを確保したLGWAN（総合行政ネットワーク）上でサービスが提供されるため安心です。

これらにより、「SuperCALS」は、自治体のDX推進と行政サービスの向上に貢献するソリューションとして評価されています。

SuperCALSの口コミ・評判

横浜港埠頭株式会社
〈課題〉
・設計図書、仕様書の配布業務、紙入札に伴う入札会場の確保の手続きなどを効率化する必要があった。
・入札開札時の読み上げや判定手続きに伴う精神的負担を軽減したい。
・外郭団体が入札を電子化する場合、入札の可能性がある業者すべての名簿を作成する作業が発生。対面で必要情報を確認するなどの作業を回避したい。
〈効果〉
・設計図書類はシステムへアップロードして配布するため、受け渡し窓口業務は不要に。訪問する入札業者への対応業務の拘束から解放。入札業者が集まる必要がないので、開札時に会議室の予約や準備が不要に。
・インターネット経由での運用になり、入札業者を集めて行う入札開札が不要となり、開札後の対応が必要な事案発生時などにも余裕をもって対応が可能。精神的負担が大幅に軽減した。
・入札参加資格申請受付システムを併せて導入。インターネット経由で業者が必要情報を入力することで名簿を作成できるので、対面受付、職員によるデータ入力が不要に。

引用元：SuperCALS公式HP

社会・公共ソリューション「CYDEEN」

主な機能	プロダクト・料金マスタ管理、顧客管理、契約情報管理、請求処理、債権管理など
初期登録料	要問い合わせ
月額費用	要問い合わせ

編集部コメント

「CYDEEN」は、25年以上にわたる多くの導入実績があり、自治体業務に精通したノウハウが蓄積されています。

クラウド型サービスを利用することで、複数の自治体や団体間でのシステム共同利用が可能になり、コスト削減と効率化を両立できます。

煩雑な申請・調達業務を電子化・オンライン化し、異常検知や文字認識などにAIを組み合わせることで、監視精度の向上や分析工数の大幅な削減が可能です。

計画・設計、入札・契約、工事施工、維持管理といった公共事業の全ライフサイクルをカバーする多様なサービスを提供しながら、水インフラ監視サービスなど専門的なサービスにも対応する機能を揃えている点が最大の特徴です。

CYDEENの口コミ・評判

福岡県築上郡吉富町

〈課題・ニーズ〉
・手作業が多い紙書類中心の調達業務を見直し、業務を効率化したい
・経験の浅い職員でも、調達業務が行える業務体制を構築したい
・対面での入札・開札を見直し、コロナ禍における対面接触機会を削減したい
〈導入効果〉
・調達業務の電子化・オンライン化により、紙書類や手作業の多い業務プロセスを大幅に見直し
・一連の調達業務をシステム化することで、業務の標準化・省力化が実現
・入札・開札の電子化・オンライン化により、対面接触機会の削減に成功
・コスト削減や入札参加業者の利便性向上も実現

引用元：CYDEEN公式HP

青森県八戸市

〈課題・ニーズ〉
・入札会場の手配、開札時の立ち会い、書類チェックなど、入札事務にかかる職員の作業負担が大きい。
・業者側にとっても、入札事務の作業負担や時間的拘束は重く、入札参加を見送る原因の一つとなっていた。
・自庁導入型の電子入札システムは、構築・管理にかかるコストが高く、費用対効果が見込めない。
〈導入効果〉
・電子入札の実施により、開札1件あたりの所要時間は2分の1に短縮。
・入札事務の作業負担が大幅に軽減された。
・電子入札の実施により、業者側の事務負担が軽減。利便性の向上により入札数の増加が期待できる。
・クラウドサービスのため低コストでのシステム導入・運用が可能に。十分な費用対効果が期待できる。

引用元：CYDEEN公式HP

情報共有ASPサービス「工事監理官」

主な機能	帳票作成、ワークフロー、ワンデーレスポンス、電子納品データ作成支援、施工体制台帳作成・管理、フォルダ管理など
初期登録料	要問い合わせ
月額費用	要問い合わせ

編集部コメント

「工事監理官」は、国土交通省北陸地方整備局などで試行され、有効性が確認されて一般化したという実績があります。

また、東北地方整備局をはじめ多くの県や市町村の建設業協会などで推奨システムとして採用されており、全国的に高い信頼を得ているといえます。

紙やE-mailによるやり取りを、システム上での発議・回覧・決裁（電子押印）に置き換え、書類提出の手間や時間の削減を実現しているシステムです。

受注者からの質問や協議に対して、即日回答するワンデーレスポンス機能、図面などの大容量データを共有・管理できる機能などが特徴です。

利用方法に関するヘルプデスクなど、親切丁寧なサポート体制にも定評があります。

まとめ

自治体が工事管理システムを導入するメリットは大きいです。

現場担当者の業務負荷を軽減し、ペーパーレス化によるコスト削減を実現します。 

また、リアルタイムの情報共有を可能にするため、現場状況の把握や指示、確認がスムーズになります。

工事情報の共有の精度が高まり迅速化することは、正確な進捗管理や品質管理に繋がるものです。 

国土交通省などが推進する「ICT（情報通信技術）の活用」という観点からも、小規模なシステムから試してみるなど、段階的な導入からでも検討することが有効だと考えます。