UAV(ドローン)は、建設業が抱える、さまざまな課題を解決するICTツールとして注目されてきました。
特に測量分野では、測量機器の進化や法令の整備とともに、ドローンが広く活用される素地が整っています。
しかし中小規模の測量会社の方の中には、実際の導入や運用は検討中という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、UAV測量の概要、導入のメリットや測量方法、注意点などを解説します。
また、運用の開始に役立つ、UAV測量に必要なものついても説明していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
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UAV(ドローン)測量とは?
UAV(ユーエーブイ)は、Unmanned Aerial Vehicle(アンマンド・エアリアル・ビークル)の略で、直訳すると無人航空機ということになります。
定義としては、2つ以上のローターを搭載した回転翼機のことです。
一般的には、ドローンという通称が浸透しています。
しかし実際には、UAVは遠隔操作による操縦、ドローンはプログラムによる自動制御というくくりで区別されることもあるようです。
UAV測量とは、このUAVに、空撮用の可視カメラやサーモカメラ(遠赤外線カメラ)、レーザースキャナーなどの機材を搭載して測量するものです。
UAV測量は、国土交通省が推奨しているICT施工の一つであり、国土地理院が操作手順や安全基準をマニュアル化しています。
UAVや3次元測量、レーザー測量という最先端の技術を導入することで、人員不足の解消や生産性の向上を可能にするものとして大きな期待が寄せられています。
しかし実際の導入にあたっては、デメリットや注意点、必要となる機材などを慎重に検討することも重要でしょう。
国土交通省国土地理院|UAVを用いた公共測量マニュアル(案)
UAV(ドローン)測量で建設現場はどう変わる?導入のメリット
ICT施工の一つであるUAV測量は、建設現場をどのように変えて、どんなメリットをもたらすのでしょうか。
UAV測量の導入で得られるメリットを次の4つに集約して解説します。
- 測量全体のコストを削減できる
- 測量に係る時間を短縮できる
- 3Dモデルを容易に作成できる
- 立入困難な場所でも活用できる
測量全体のコストを削減できる
UAV測量を導入することによって、測量全体において作業手間と作業時間を格段に削減することができます。
たとえば、UAV測量においても地上作業は必要ですが、従来の地上測量と比較して最短で6分の1程度にまで短縮可能とされています。
PCによるデータ解析は必要ですが、それを含めても大幅にスピードアップできます。
地上測量の場合、災害現場や近づく際に危険が伴う場所での作業がありますが、UAVなら素早く安全に測量作業が可能です。
またセスナ機などで写真測量やレーザー測量を行おうとすると、100万円程度の費用が必要だとされますが、UAVであれば十数万円程度で実施可能です。
さらにセスナ機よりも低空飛行ができるので点群データはより詳細になります。
測量後の内業においても、取得した3次元点群データは3Dモデルへの合成処理が容易なため作業時間を大きく短縮できます。
測量に係る時間を短縮できる
従来の測量方法では、地上でTS(トータルステーション)やGNSS測量機器を使用して、対象となる地形・地物を測定し地形図をCAD図面化するのが一般的でした。
このため、たとえば3ヘクタールの土地を測量するのに2〜3日程度は必要になります。
しかしUAV測量なら半日で可能です。
成果品作成においても、測量データを基に断面図や横断図を作成するのに3日ほどかかりましたが、UAV測量と専用ソフトを活用すれば1. 5日程度で完成させることができます。
UAV測量の導入によって、測量に係わる時間を大幅に短縮できるのです。
3Dモデルを容易に作成できる
UAV測量は、測量データを基に、3Dモデルを容易に作成できるのも大きなメリットです。
UAV測量では、連続的に撮影した写真画像と、各種センサーが捉えた位置情報で高密度な点群データを取得できます。
さらに取得した点群データは、専用のマッピングソフトで自動的に解析され、高精度の3Dモデルとして生成されます。
この3次元点群データは、国土交通省のICTであるBIMやCIMの活用によるi-Constructionにも対応しており、成果品として本部や現場事務所、発注者などとリアルタイムで共有することが可能です。
立入困難な場所でも活用できる
UAV測量では、地形測量、縦断測量、横断測量が1回のフライトで完了できるため、斜面崩壊、地すべり現場、災害現場など立入困難な場所でも、スピーディーな測量ができます。
UAV測量においても、測量範囲が広くなれば多くの地上基準点の設置が必要でしたが、技術的改善が急ピッチで進んでおり、より少ない設置での測量が可能となっているのが現状です。
この技術的な進歩は、これまで立入りが躊躇されていた沼地や森林、崩落した崖などでもきめの細かい調査ができる状況へと結びついています。
コストを抑えながら3Dデータが容易に手に入るUAV測量は、世界的なニーズが高まりつづけており、今後さらなる技術革新がなされ活用できる場所が増えていくことが期待されています。
UAV(ドローン)測量方法
UAV測量には、写真測量、レーザー測量、グリーンレーザー測量の3つの測量方法があります。
それぞれの測量の概要と、従来の測量との違いについて説明します。
UAV写真測量
UAV写真測量は、一般的に以下の手順で進められます。
- 作業計画(現地調査)
- 標定点の設置
- 撮影
- 3次元形状計
- 点群編集
- 3次元点群データファイルの作成
- 品質評価
対象となる地形写真を撮影し、写真データを写真測量用ソフトや点群処理ソフトで解析し、対象地形の3次元点描データを作成できます。
従来の測量と違い・UAVの有効性
TSなどを用いた従来の測量に比べると、準備、計測、内業(解析・編集など)すべてにおいて大幅な時間短縮が実現します。
立入り困難や危険を伴う場所でも、安全に作業をすることが可能です。
汎用性の高い3次元点群データを容易に作成できるので、3Dモデル作成、3次元出来形管理、各種図面の作成など応用範囲が大きく広がります。
UAVレーザー測量
UAVレーザー測量は、一般的に以下の手順で進められます。
- 作業計画(現地調査
- 3Dレーザースキャナーと標定点の設置
- スキャン
- スキャン結果の確認(PCやタブレットを活用)
- スキャンで取得した点群データの合成
- ノイズ除去(ブラッシュアップ)
- データ出力(主にCA用)
UAVレーザー測量は、UAVにレーザー測距装置を搭載し、地上100メートル程度の上空から測量を行います。
最近では、3Dレーザースキャナーの搭載が一般的になりつつあります。
上空から地上にレーザーを照射して3次元測量を行うので、写真測量では難しい木々や草の下の地面を測量することができます。
従来の測量と違い・UAVの有効性
UAVレーザー測量の最大の長所は、従来は計測困難だった樹木が生い茂る山林などでも詳細な地形データの取得が可能となったことです。
また地上型3Dレーザースキャナーのような局所型の測量ではなく、上空からレーザーを照射するので広範囲なエリアを短時間で測量することが可能です。
同じ上空からのレーザー測量においても、従来のセスナ機などの航空機に比べると、UAVは費用を大幅に削減できます
グリーンレーザー測量
UAV搭載型のレーザー測量で注目されているのが、グリーンレーザー測量です。
グリーンレーザーは、目で見ると緑色の光に見えるのが特徴です。
水を透過するグリーンレーザーをUAVに搭載し、陸部と水部を同時に3次元計測します。
特に2017年からの国土交通省の革新的プロジェクトに参画するようになり、各公共工事での導入が広がっています。
陸部・水部の地形をシームレスに計測し、河床地形も詳細に再現し、漏れのない計測が可能です。
1m2あたり100点以上を照射して、航空レーザー測深器(ALB)よりも密度の高い点群データを取得できます。
従来の測量と違い・UAVの有効性
グリーンレーザーの登場により、従来の3次元計測の課題となっていた水際部の測量精度が大幅に向上しました。
これまでは現地での測量でしか捕捉することができなかったのです。
またこのUAVグリーンレーザー測量とマルチビーム測深を併用することにより、残土処理上の残用量、ダムの貯水量、床掘土量の数量計算が可能となっています。
UAV(ドローン)測量のデメリット・注意点
UAV測量は、搭載した各種機器から取得したデータを専用ソフトで加工し、3次元点群データやオルソ画像をつくります。
さらにこれらを使って、3Dモデルや図面作成を行って成果品とするものです。
しかし、UAV測量には、知っておくべきデメリットもあります。
デメリットや注意点を以下の3つに集約して説明します。
- 遠隔操作の難しさと精度
- 悪天候や強風には弱い
- 長時間の測量には不向き
遠隔操作の難しさと精度
UAV測量で精確なデータを取得するには、UAVを安定した状態で飛行させる高い操作技術が求められます。
最近では自動航行ソフトの機能が向上し、手動で難しい操作を行わなくても高画質で精確なデータが得られるようになっていますが、基本的な操作技術や知識は必要でしょう。
またUAVを運用するにあたっては、条例や規制、安全管理に詳しい専任者の配置も望まれます。
悪天候や強風には弱い
UAV測量では、悪天候や強風によるUAV機体への影響が大きくなり、安定した測量作業が難しくなります。
悪天候時は、安全性や正確性を確保できないという観点から、測量作業を行わないのが一般的です。
風や雨などの天候条件を的確に判断して、測量作業に反映できる経験と知識を持つ人材が必要になるでしょう。
長時間の測量には不向き
UAVは、バッテリーで稼働するので飛行時間が限られていて、通常30~40分ほどです。
そのため長時間や広範囲の飛行には向いているとは言えません。
また風の影響を受けやすく、強風や向い風があると、バッテリーの消耗は大きくなり飛行時間は短くなります。
事前に予備のバッテリーを用意して、交換作業を迅速に行うことでリスクを軽減することは可能です。
UAV(ドローン)測量時に必要なもの
国土交通省が推進している建設業界のICT導入において、測量業界ではUAV測量が大きな柱となっています。
このUAVを、国土地理院が整備した「UAVを用いた公共測量マニュアル 概要版」に準拠して活用するときに必要になるものについて解説します。
- UAV(ドローン)本体・タブレット・対空標識
- 写真測量|カメラ・GPS・高度計
- レーザー測量|レーザー測距装置
- 自動操縦アプリ・データ解析ソフト
- UAVの登録・飛行許可など
UAV(ドローン本体)・タブレット・対空標識
UAV測量には、当然のことですがUAV本体が必要になります。
基本となる写真測量とレーザー測量、それぞれの装置を搭載できるUAV本体です。
本体のバッテリーは、持続時間が長いほうが交換時間を短縮できる分、測量はスムーズになります。
タブレットは、フライト中にモニター代わりにする場合に必要ですが、コントローラーにモニターが装備されている場合は必要ありません。
対空標識とは、UAV測量で必須となる「標定点」の位置を示すための目印のことです。
サイズや色などに規定があり、ネットの通販などでも購入できます。
写真測量|カメラ・GPS・高度計
写真測量では、カメラとGPS、高度計が標準装備で、さらに高精度を求める場合は赤外線カメラや高性能カメラが必要です。
また高精度な位置情報測位ができるRTK技術を活用するためのモジュールを購入する必要があります。
RTK技術とは「相対測位」のことで、複数の受信機でGPSやGNSSを受信して、その情報をやり取りすることで精度の高い測位を得る技術です。
測量や飛行ルート設定に必要なアプリやソフトも機体に対応したものが必要になります。
レーザー測量|レーザー測距装置
レーザー測距装置は、レーザースキャナーとも呼ばれています。
レーザー光を発射して、地表から反射して戻ってくる時間差を調べて距離を決定する装置です。
UAVでは、測距装置にカメラが付いて、地表の画像も同時に取得できるものが一般的です。
この他、レーザー測量に欠かせない技術に、GNSS(UAVの位置を知るための装置)とIMU(レーザー光補正のための慣性計測装置)があります。
レーザー測距、GNSS、IMUの3つの技術により、レーザー計測点を正確に算出することが可能になります。
自動操縦アプリ・データ解析ソフト
UAVの飛行コースを設定したり、自動操縦で飛行させたりする「自動操縦アプリ」が必要になります。
無料もありますが、できれば機能が揃った有料アプリ(3,000円程度)の購入をおすすめします。
UAVで取得したデータを解析して、3次元点群データやオルソ画像を作成するソフトも必要です。
3次元点群データとは、写真測量やレーザー測量で得られた3次元座標をもった点データの集合のことで、解析・モデリングするには専用の点群処理ソフトが必要になります。
オルソ画像とは、実際の写真の「歪み」を修正した写真のことです。
写った物の形や位置が正しく配置されるため、画像上で正確に面積や距離を計測できるようになります。
UAVの登録・飛行許可など
2022年6月20日から、重量が100g以上のUAVは機体の登録が義務化されました。
同時に、UAVなど無人航空機の飛行制度が大きく変化していますので注意が必要です。
UAVなどの無人航空機を所管しているのは国土交通省です。
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UAV(ドローン)測量を活用し建設現場のDX化を図ろう
測量分野でのICT施工の中心となっている、UAV測量について解説してきました。
主な内容は以下の通りです。
- UAV測量の概要
- 導入の4つのメリット
- UAVの3つの測量方法
- UAV測量の3つのデメリット
- UAV測量に必要なもの
国土交通省が盛んに推奨し、UAVメーカー、測量機器メーカー、データ解析に関わるソフトウェア企業などが一体となって取り組んでいるという印象を強く持ちます。
事実、UAV測量は、多くの測量会社様にとって大きなメリットがあると評価されているのが現状です。
最新の技術から当たり前の技術になろうとしているUAV測量の導入は、時代の趨勢であることは間違いないようです。